男が私道にバリケードを張り、通行料を脅し取ろうとして逮捕されたことがニュースになった。
生活道路はライフライン。基本的な権利を脅かす反社会的行為は許されない。
とはいえ、私道の通行をめぐるトラブルはしばしば聞かれるものだ。
ここではケーススタディを通じて「所有権のない私道の通行」について考えてみる。

隣り合うA宅とB宅。
A宅が面する公道はその幅員がたいへん狭く、車で乗り入れるにはB単独所有の私道を通らなくてはならかなった。
そのためAはBから私道の通行承諾を得て覚書を作成。
これによって約20年間、Aは平穏無事に車で私道を通っていた。

ところが、ある日事件が起こる。
B宅がCに売却され、そのCがAに「うちの私道を通ることはまかりならん」と通告し、Aのガレージ前にバリケードを設置したのだ。

これは困った。
Aにとって私道を通れないことは家族の命にかかわる。ほぼ毎日のように家族を車で病院へ送迎していたからだ。
このまま引き下がってあきらめるしかないのか……

法律を少し知っている人ならこう考えるかもしれない。
「地役権の登記がないと通れないんじゃないか」
確かにそう。
ある目的のために他人の土地を使わせてもらう権利を地役権という。この場合は通行目的だから通行地役権とも呼ばれる。
地役権の登記があれば、誰に対しても通行の権利を主張できる。

ただ、この登記は「第三者」への対抗手段。
「第三者」とは新たに法律関係に入った者を指す。
逆にいえばCが「第三者」でなく「契約の当事者」であれば、Aは登記なしでCに地役権を主張できるのだ。

CはB宅を譲り受けるとき、接道状況、周りの家との関係を確認しているはずだし、確認できる立場にある。また、B宅の私道にA宅のガレージが面しているのを見れば、継続的に車の出入りがあるのは明らか。
Cは第三者ではなく当事者だ。
だからAは通行地役権を登記していなくても、Cに「私道を通せ」と主張できる。

補足をひとつ。
通常、通行地役権の覚書には、その権利義務が各当事者の承継者にも引き継がれる特約が明記されている。
上記のようなもめ事を引き起こさないためだ。
この特約が残る限り、A宅B宅の歴代買主は皆地役権を承認することになる。

なお、あの日不動産では私道の通行につき、事前に書面で説明しますのでご安心ください。

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