とにかく雨が降らない。
全国的に空気の乾燥した状態が続き、水不足も心配されている。
そんななか各地で山火事が発生し、野焼きで人命が失われる事態も起こっている。
今回はその野焼きについて。

都市部の人からすれば
「こんなに火災が頻発しているのに。いろいろ燃やすと二酸化炭素やダイオキシンもまき散らすのに。なぜわざわざ危険を顧みず焼くのだろう」
と思うかもしれない。
そんなことは野焼きされる土地の持ち主だって百も承知だ。リスクをとって焼くのには理由がある。野焼きには次のようなメリットがある。

【メリット】
1.効率的に枯れ草を減らせる
耕作で出た枯れ草をごみとして処分するのは大変。ボリュームがありすぎる。地方は特に公共サービスの人手不足が常態化しており、次の耕作をスムーズに始めるためにはその場で燃やすのが最適解となる。

2.土中の窒素飢餓を防ぐ
農作物の成長に不可欠な栄養素のひとつが窒素。枯れ草を放置しておくと、微生物がどんどん分解してくれると同時に土中の窒素も大量に消費されてしまう。野焼きによって微生物の活動を抑えることができ、土中の窒素量を適正に保つことができる。

3.病害虫を死滅させる
野焼き最大の目的ともいえる。わらや枯れ草に付いた病害虫の卵を一網打尽にやっつけることができる。また、虫の巣作りを防ぐこともできる。

4.肥料を作ることができる
野焼きで得られた灰は草木灰と呼ばれ、高アルカリ性の肥料として役立つ。カリウムを多く含み、酸性土壌を中和してくれる。作物の葉面にふりかけておけば殺菌殺虫効果も期待できる。言うまでもなく天然の肥料なので健康上の懸念が払拭される。

5.森林化を防ぐ
野焼きは草原を健康に保つ目的で行われることもある。阿蘇の野焼きが有名な例だ。低木を一斉に焼いて森林化を防ぐことで、新芽の芽吹きを促し、草原の生物多様性を維持できるのだ。
また、植物がしっかり根を張ることは水源涵養につながり、土砂災害の防止にも役立つ。ちなみに阿蘇では、野焼きで放出される二酸化炭素よりも、草原全体で吸収される二酸化炭素の方が多いという研究結果が出ている。

文字どおり何かと煙たがられる野焼きだが、これだけのメリットがある以上簡単に止めることはできないのだ。
もちろんやたらめったに焼くことは許されない。
やる側は下記のようなルールを心得るべきだ

【野焼きのルール】
1.草木以外の物を燃やさない
野焼きは農業を営むうえで古来必要とされてきた作業。草木以外の物を焼いてはいけない。ビニール類やプラスチック類、ゴム類などを焼くと有毒ガスが発生して健康被害を引き起こすため、完全にご法度だ。

2.事前に周知する
野焼きをすれば煙も臭いも出る。近所の家々は窓を閉める、洗濯物を外に出さないといった対策をすることになる。そのため、行う場合は関係各所への事前通知が求められる。

3.風向きや風速を考慮する
なるべく周辺に影響が出にくい時間帯を選ぶようにする。風が強ければ火災につながる恐れがある。中止する勇気を常に持ち合わせておきたい。

4.消防署に連絡しておく
規模が大きいと火事に間違われることがある。トラブルが予測される場合は所轄の消防署に事前連絡し、周辺に混乱を招かないよう段取りする。

5.燃やす物を乾燥させておく
火災予防に努める一方、燃やす物を十分乾かしておくことも必要。湿っていると焼き切るのに時間がかかるからだ。なるべく短時間で終わらせるようにしたい。

野焼きに限らずさまざまな場面で、立場が異なる人たちの小競り合いが増えている。
「自分こそが正しい」という考えに陥ることなく、調和のとれたプロセスをたどるようにしたい。

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