凍結深度という言葉を聞いたことがあるだろうか。
温暖な地方の人にとっては、あまり耳慣れない単語かもしれない。

寒冷地では冬場に入ると池の水は凍るし、軒先に氷柱ができる。
戸外に飛び出している水道管は、内部に水がたまりっぱなしだと凍って破裂する恐れがある。
こうした現象は土にも起こりうる。土も凍るのだ。

冷やされた外気は地面にも入り込み、地表近くからだんだん土を冷やし、あげくは凍らせていく。
本来地中の土は温度が安定しているけれど、外気の影響が強ければ強いほど深い所まで土が凍る。
凍結深度とは、凍結が予想される土の深さを数値化したものだ。

ではなぜこの凍結深度が問題になるのか。
土が凍るとき、土中の水分が凍結して体積が増し、地盤面が上昇する。
その結果、建物の基礎や配管が土に圧迫され、持ち上がったり割れたりする危険が出てくるというわけだ。
これは凍上現象は呼ばれる。

こうした基礎や配管の被害を防ぐためにはどうすればいいのだろう。
凍結の原因となる水をためないよう、なるべく水はけをよくすることは重要。
さらに重要なポイントは、凍結深度よりも深い地点まで土を掘って建物の基礎を配置することだ。
そう言われてもどこまで掘ればよいのか、一般の人には見当がつかない。

数字を知るのにいちばん手軽な方法は、都道府県のサイトを見ることだ。
例えば、北海道のサイトでは各市町村の凍結深度が一覧で見られる。なかには100㎝、120㎝といった自治体もある。つまり基礎を埋めるのに土を1m以上掘る必要があるのだ。

また、知っておきたいのは凍結深度が必ずしも気温の低さに比例しないということ。
豪雪地帯でも雪が地面を覆い、地中に保温効果をもたらすことがある。
逆に考えれば、雪が降らないからといって警戒を解くこともできないのだ。

なお、建築基準法施行令の規定に基づき、法令上も下記のとおり定められている。

3 建築物の基礎をべた基礎とする場合にあっては、次に定めるところによらなければならない。
(中略)
四 根入れの深さは、基礎の底部を雨水等の影響を受けるおそれのない密実で良好な地盤に達したものとした場合を除き、十二センチメートル以上とし、かつ、凍結深度よりも深いものとすることその他凍上を防止するための有効な措置を講ずること。

4 建築物の基礎を布基礎とする場合にあっては、次に定めるところによらなければならない。
一 (略)根入れの深さにあっては二十四センチメートル以上と(略)しなければならない。

○建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件 (平成十二年五月二十三日)(建設省告示第千三百四十七号)

べた基礎というのは、床下一面にコンクリートを敷き込み、その周りをすべてコンクリートの基礎で囲み、面的に建物を支える工法。
対して布基礎は、壁や柱を線的もしくは点的にコンクリート基礎で支える工法だ。

つまり、
べた基礎は
①地表から12㎝以上の深さ
②かつ、凍結深度よりも深いもの

布基礎は
①地表から24㎝以上の深さ
②かつ、凍結深度よりも深いもの

であることが求められる。

実をいうと、凍結深度を公表していない都道府県は多い。
標高や立地環境で数字が変わるため、一律に定めるのが困難というのが理由だ。

ただ、地元の建築士、設計士といった専門家は、過去の経験から必要な深度を知っている。
基礎部分は工費を大きく左右するため、やみくもに掘りすぎるのもよくない。
納得のいく話し合いをして必要かつ十分な施工を目指そう。

最後に注意事項。土が凍るという理由で、寒冷地では冬場に基礎工事を行わない。
基礎を秋の中盤までに造っておかなくては、冬場は何も工事が進まず、数か月棒に振ることになる。
凍結深度は建築スケジュールにも影響することを覚えておきたい。

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