穏やかな海に雄大な夕日が沈んでいきます。
ここは石川県、能登半島の西端。長らく遠洋漁業で栄えた漁師町です。
黒光りする重厚な瓦、素朴な板壁。統一感のある家並みの中、オープンな間口が目を引く古民家があります。TOGISOという宿です。
築80年の民家にバーカウンター、厨房、シャワー室などを造りつけてリノベーション。
宿泊者どうしがわいわいお酒と食事を楽しめる空間に生まれ変わりました。
この日は料理研究家魔女っこれいさん @barmajyo 企画による泊りがけのお食事イベント。
夜風に吹かれながら能登の食材を満喫できる会。約10名の人たちが集まりました。
地元産の甘海老、メギス、和風ポトフなど、絶妙に高めあうお酒とともに頂きます。
メギスは漁獲後あっという間に鮮度が落ちてしまう魚。海や市場の近所でしか食べられない貴重な食材です。
今回はムニエル。衣がサクッ、身がフワッ。淡泊で優しい味に頬がゆるみます。
キュウリ、ニンジン、大根などの野菜もみずみずしい。キャラが立っています。
食感ぷりぷり、噛むと舌でとろける甘海老は、山椒入りのビールと頂きました。
ビールと山椒の組み合わせには驚き。香味と刺激が立体的。後味のピリピリ感がおもしろい!
締めのカルボナーラは玉子、ベーコン、サーモンを程よい固さのクリームでホールド。
おいしい食事を囲みながらお話が盛り上がったことは言うまでもありません。
TOGISOは宿泊施設だけでなく、町のコミュニティスペース的な顔ももっています。
地元の人たちが集まってお茶を楽しむこともあるそう。
オーナーさんは、付近の空き家も店舗などに活用し、お互いを機能的につないで面的なまちづくりを進めようと考えています。
雇用の促進にも観光の振興にも一役買うこと間違いなしですね。
そのアイデアの一端が翌朝に表れました。
宿の裏庭に防草シートを敷き詰めようというワークショップ企画です。
シートを並べて広げ、宝探し(モグラたたき?)的に石がない所、軟らかい所を見つけながら、シートにくさびを打ち込んで固定していきます。
作業後はれいさんお手製の松茸おにぎりが待っている! さあがんばろう。
くさびがすっと入っていくとゲーム感覚で気持ちいい! でもことごとく石にぶつかる人もいてついつい弱音が…
「重労働ですね」
「労働じゃないよ。イベントです!」
「やりがい搾取…」
笑いが生まれるなか、人海戦術で効率的に力仕事を終わらせる。オーナーさんの知略と人柄ですね。
前日のお料理も振り返りながら、魔法は人なりという言葉が思い浮かびました。
眺めや環境がよくても、その場所を決定的に魅力づけるのはやっぱり人ですね。
イベント終わり、印象に残ったのはみんなが口を揃えて「いい宿だった」と言っていたこと。
誉め言葉が一様に口をついて出るのってつくづく素敵です。
次回は倉庫の再生ワークショップになりそう。
続きはまたいつか……
TOGISO
住所:石川県羽咋郡志賀町赤崎ロ58-1
交通:のと里山海道「西山」ICより約28km車で約35分
予約:こちらのサイトからどうぞ。