所有者が不明な土地の発生原因。その最たるものは、相続登記の未了だ。
土地の売買を予定していなければ、相続登記をしなくともこれといった不利益はない。
また、田舎の土地となればなおさらで、登記費用や手間に見合うメリットがない。
こうした相続登記のインセンティブ不足が、所有者がはっきりしない不動産を増殖させている。

この増殖にストップをかける特効薬として期待されるのが、相続登記申請の義務化だ。
そもそも不動産登記は転ばぬ先の杖であり、放置したリスクは各人が負うという私的自治の色合いが強い。ゲームの切り札を公法で義務化するのはいかがなものか、との声もあった。
そこを押しての法律改正だ。所有者不明の土地を減らそうとする、国の本気度が半端ない。

さらに注目すべき点は、過料がセットということ。
正当な理由なく、相続開始を知ったときから3年以内に相続登記しなければ、10万円以下の過料が課されるのだ。

こうしたムチに対してアメも用意されている。それが相続人申告登記制度。
「私が相続人です」と法務局に名乗りでれば、サラッと職権的に登記をしてもらえて、過料も免れることができる。オンラインでの手続きも可能だ。
ただこれは、あくまで緊急時の救済策。相続開始や所有権取得を知ってから3年以内に遺産分割し、確定的な名義人で登記するのが本筋だ。

改正法の施行は2024年4月1日から。施行の際、数次相続人が寝耳に水でびっくりする恐れがあること、過料を課す課さないの線引きをどうするか、義務に高額な登録免許税を課すことの不公平感など、問題はいくつか指摘されている。足らざる部分は、実際に運用しながら試行的に埋めていくことになりそうだ。
まずは国民の共感を得やすくするため、登録免許税の軽減から進めるのが吉ではないだろうか。

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