
不動産売買契約で必要な書類の代表格が、売買契約書と重要事項説明書。
ただ時折、これらに「覚書」という合意文書が加わることもある。
A4判1枚、もしくはA3判1枚にいくつかの約束事が箇条書きで示され、最後に契約書と同様、署名捺印で締めて合意の証とする文書だ。
さて、この覚書とはいったい何者なのか。
覚書の役割は主に3つ。次のようなものだ。
1.契約書の補足
覚書は、その売買契約特有の内容について使われることが多い。契約書から独立させて強調し、双方が特段の注意を払うようにする。
田舎暮らし向きの土地でよくあるのが、農地に関する覚書だ。
・農業者の売主が非農業者の買主に農地を売るとき、買主が農業者資格を得るまでは仮登記とすること。
・その間売主は他者に二重売買してはならず、買主が農業者資格を得た時点で本登記移転に協力すること。
といった趣旨が盛り込まれる。
農業者資格を得るには一定の期間がかかるので、時間の経過で風化させないよう、あえて覚書にまとめて当事者の意識を高めるのだ。
また、土地の引渡し前に、買主による測量目的の立入りを許すための覚書もある。
・土地立入りは測量目的に限る。
・測量費は買主負担とする。
・実測による面積の増減があっても、売買価格に反映させない(もしくは反映させる)。
などの条項が考えられる。
2.契約内容の変更
当初の契約書に沿った形で引渡しへの課題が消化できていないため、事後の事情変更を覚書にまとめ、双方で合意するというものだ。
よくあるのが、引渡し期日の延長。
ローンが通らず、本来であれば解約となるところ、買主の強い購入意欲に答える形で売主が期日延長に応じるようなケースだ。
もしくは、思いのほか隣地所有者や役所との境界確定に時間がかかり、引渡し期日を過ぎてしまう場合もある。
こうしたときに、売主買主双方で
・新たな引渡し期日
・違約時の金銭負担の有無、金額
などを取り決める。
3.後日の紛争防止
権利関係が複雑な不動産に多い。売主買主のみならず、第三者を交えて署名捺印を行う。買主の権利を害さないよう、売主が先回りして第三者と調整を図り、その合意内容を買主にも承継させる、といったものだ。
次のような事例が考えられる。
- 土地のなかに第三者の土地が含まれていて、相手方に借地料を支払わなくてはならない。
- 隣地からの越境物について現状はこのまま認めるが、建て替えの際は越境を解消してもらう。
- 私道に面した土地に私道持分がないとき、売主が地主から持分を購入し、後日買主に引き渡す。
- 土地の下を第三者の水道管が通っており、その管の交換や修理を目的とする土地への立入りや掘削を第三者に許す。
ひと口に覚書と言っても、目的や書き方はさまざま。
なお、あの日不動産では遺漏なくポイントを押さえた覚書を作成し、あなたの代わりとなって交渉を行いますのでご安心ください。