不動産売買で重要課題のひとつが隣地との境界。中古物件を買って平穏に暮らしていたものの、あるとき隣人から思わぬ指摘を受けてしまい……

Q:5年前に個人間売買で中古住宅を購入し、これまで不自由なく使ってきました。
ところが最近、隣の所有者が
「お宅の小屋が境界線からはみ出ているので何とかしてほしい。小屋の撤去が無理なら、はみ出ている分の土地を買い取ってほしい」
と言ってきました。
小屋の構造と規模から一部撤去は難しく、土地の買取をするしかなさそうです。
どうすればよいでしょう。

A:それは困りました。
調べるべきポイントは
・本当に越境が発生しているのか。
・発生しているとすれば、どれほどの面積なのか。
・その面積の価格はいくらなのか。
という点です。順を追って見ていきましょう。

1.境界標がはっきりしている場合
その境界標どうしをビニールテープなどで結んでみます。
この作業は境界を争っている相手方と一緒に行います。
当人どうしだけでやると、揉めてヒートアップしたとき収拾がつかなくなるので、できれば中立的な人に同席してもらうのがよいでしょう(それぞれの親戚、知人など)。

越境がなければめでたしめでたしで済む話。
もし越境が発生していれば、下記と同様の手順を踏みます。

2.境界標が不明な場合
そもそも境界標が不明なら越境の存在も不明なはずです。
ただし、相手方が測量を強く希望するなら、下記のような内容で両者覚書を交わします。
相手方を甲、あなたを乙とします。

  1. 乙が土地家屋調査士を探し、測量費用の見積をとる。
  2. 見積金額を甲乙で確認する。
  3. 金額に問題なければ、甲乙で費用を折半して測量を依頼する。
  4. 越境が見つかった場合、乙がその越境部分を買いとる。
  5. 越境部分の分筆登記費用については甲乙で折半する。

測量の結果、越境が判明し、面積がわかったところで価格査定に入ります。

3.買取価格をどのようにして決めるか
問題となるのは、どのような基準で買取価格を決めるかということです。
最もスムーズなのは、あなたが信頼できる不動産会社を選んで査定してもらい、その価格で買い取ることです。
しかし、相手方は買いたたかれることを嫌って、自身のルートで査定したがる可能性があります。
その場合はお互いの査定価格をもとに協議し、中間の価格で落としどころを作るしかなさそうです。それぞれがまともな不動産会社を選んでいれば、そう大きな差は生まれないはずです。

分筆登記は測量と合わせて土地家屋調査士に依頼できます。
測量完了後、図面で面積を確認し、買取を済ませた時点で分筆登記を行うようにします。

大切なのは後々遺恨を残さないこと。
相手方への協力姿勢を示しながら、境界確定はお互いにメリットがあることを強調し、うまく切り抜けましょう。

なお、不動産の個人間売買にはトラブルが付き物です。たとえ面倒でも不動産会社を経由して購入されることをおすすめします。

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