以前お話した、隣地からはみ出した「木の枝ニョキニョキ」問題
どうしても隣地所有者と連絡がつかなければバッサリ切っていい、という結論だった。
では、越境に関係なく、長らくほったらかしの隣地に困ったときはどうすればよいだろう。
例えば、境界確定の確認をしたいのに連絡が取れない、隣地から種が飛んできて自分の農作物に影響を与える、といった場合だ。
ここでまた威力を発揮するのが2021年の民法改正だ。
その名も「所有者不明土地管理制度」
長ったらしい名称とは裏腹に、これまで時間がかかっていたトラブル処理を簡潔、スピーディに進められる、救世主的な土地政策だ。
まず、この制度の趣旨をかみ砕けば
「自分ちの有効利用を妨げる、隣地のお困り問題を素早く解決」
といえる。
ポイントは以下のとおり。

1.土地に特化した財産管理制度
従来の管理制度は、土地だけでなく、財産全部を取り仕切る作業が必要。そのため、土地のことだけを解決したい人には甚だオーバースペック。新しい制度は、土地の管理に特化しているので、時間も労力も短縮できるというわけだ。※1

2.裁判所の許可があれば隣地の売却も可能
他人の土地を売るとはけしからん!と言われそうだが、これも理論上可能。驚くことに、裁判所がOKを出せば、隣地所有者の同意なしで隣地を売却できてしまう。陣取りゲームのようだが、上の制度趣旨を具体化した実効策としては申し分ない。

では、誰が売却の権限をもつの?という話だが、そこで登場するのが「所有者不明土地管理人」。裁判所が選任し、弁護士、司法書士、土地家屋調査士といった人たちが念頭に置かれている。

さらに、それでは誰が「所有者不明土地管理人」の選任を請求できるのだろう。
現に困っている人だけではなく、その問題の土地を買いたがっている人も請求できるのか?
このお話は次回にします。

※1 建物についても「所有者不明建物管理制度」があります。

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