不動産購入の際に利用されるのが住宅ローンや事業用ローンといった融資制度。
融資利用を前提とする売買契約書には、必ず融資に関する特約がある。
その内容は次のようなものだ。

  1. 融資が承認されない場合の契約解除期限を売主買主間で決めておく。
  2. 売買契約締結後、速やかに買主は融資の申し込みを行う。
  3. 融資未承認のまま1.の期限を過ぎた、もしくは期限までに融資金額の全部もしくは一部が不承認となった場合、売買契約は自動的に解除となる。
  4. 買主が意図的に融資を妨げた場合、3.の自動解除は行われない。
  5. 売買契約が自動解除された場合、売主は買主に手付金全額を返還する。

つまり、買主が金融機関にローン利用を申し込んだものの審査に落ちてしまった場合、購入資金の一部として払い込み済みの手付金は手元に戻ってくる。
逆にいえば、買主がローン審査を通過しないかぎり、売主には手付金返還のリスクが伴うというわけだ。

通常であれば1か月から1か月半もすれば、金融機関から審査の回答がくる。
ただ、何らかの理由で審査期間が延び、2か月もしくはそれ以上の時間を要することがある。
協力的な売主なら、売買契約を解除せずに待ってくれるかもしれない。とはいえ、売主の立場からすれば、
「本当にあの人は申し込んだんだろうか」
と疑心暗鬼に陥らないとも限らない。
何より深刻なのは、金融機関が融資審査をしている間、販売活動がストップしてしまうことだ。
さらに最悪なのは時間をかけた挙句、買主が審査で落ちてしまうパターンだ。

このようなとき、売主から問われることがある。
「手付金はやっぱり返さないといけないんでしょうか」
答えはイエスだ。
上記1~5.の内容が売買契約書に明記されているかぎり、融資が下りず物件を買えなかったことに買主の落ち度はなく、誰も責められる立場にない。買主が自ら融資を妨害したとなれば話は別だが。

そんなわけで、融資未承認を理由として売買契約解除となった場合、売主から買主に全額無利息で手付金を返還しなくてはならない。

さらに売主からこうした質問を受けることもある。
「買主が融資に落ちて物件を購入できなくても、売主は手付金を返さない、という特約は可能でしょうか」
答えはこれまたイエス。
売主買主間で合意がとれていれば問題ない。ただし買主にとってリスクが大きいため、その決断の重みをよくよく理解してハンコを押す必要があるだろう。

ローンを使う場合は、金融機関から確約を得た後で売買契約に臨むほうが安全。
トータルでみれば、その方が時間的にもメンタル的にもメリットが大きい。
無理なく購入できるプランを心がけよう。

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