
2024年4月から相続不動産の登記が義務化されたことは、だいぶ世の中に浸透してきた。
相続開始を知ったときから3年以内に登記しなければ、10万円以下の過料が課されることにも要注意だ。
とはいえ、変更登記のため登記所に行く時間が取れないこともあるだろう。
こうした状況を打破する便利な制度が2026年に誕生するので覚えておきたい。
【1】所有不動産記録証明制度
2026年2月2日から始まるこの制度、不動産の所有権名義に基づき、その人の所有不動産をまとめてリスト化、証明書の形で発行するというものだ。
従来の登記簿は土地や建物を基点として、現在または過去の所有者を知るシステムだが、このたびの記録証明制度は所有者が基点。
その人の所有不動産を一覧で確認できるため、相続登記の漏れがなくなるというわけだ。
この制度の運用が広がれば、所有者不明不動産の数は減っていくことだろう。
所有不動産記録証明制度の利用にあたっては、下記3点を押さえておこう。
1.証明書の請求は有料
便利になることなので当然無料ではない。
法務局の窓口で請求する場合、1通あたり1600円かかることを覚えておこう。
2.住所、氏名の統一が鍵
所有不動産をリスト化したくても、登記簿上の名義人の住所、氏名が古い、もしくは新旧混在する場合は、全件まとめて抽出できない。
住所と氏名の組み合わせが複数ありうる場合、もれなく所有不動産を把握するためには、その組み合わせごとに請求書を作る必要がある。もちろんその分費用は増える。
3.請求できる人は本人または相続人
登記簿謄本と違うのは、誰もが閲覧できるわけではない点だ。
証明書を請求できる人は所有者(登記名義人)本人またはその相続人に限られる。
そのため保有資産の全容を第三者に知られてしまうことはない。
本人や相続人自ら取得できない事情があれば、委任状を作成して不動産会社などに代理取得を依頼することは可能だ。
引っ越しをしたら電気やガスの名義を変えるのと同様、不動産の登記名義も変えることが大切。
新しい住民票を取ったら法務局へ行くことを心がけよう。
【2】スマート変更登記
2026年4月1日から始まるもうひとつの便利な制度。
これは引っ越しなどで住所等が変わったとき、法務局の登記官が職権で住所等の変更登記をしてくれるものだ。
変更登記に関して自分で何もする必要がない。非常に楽なシステムだ。
事前に検索用情報(生年月日など)を法務局に申し出るだけでOK。
複数の不動産をもっているならぜひ活用しよう。
なお、住所や氏名などに変更があれば、その日から2年以内に変更登記を行う義務が生じる。
これを怠ると5万円以下の過料が課せられてしまう。
スマート変更登記と同じ2026年4月1日からの運用だ。
同年4月1日以前の住所氏名等変更も例外ではない。2028年3月31日までに変更登記を終える必要がある。
国はここ数年、相続登記の促進、所有者不明土地の解消に向けて熱心に取り組んでいる。
こうした動きは翻って自身や親族にとってプラスに働く。
面倒くさがらず、使える制度はどんどん使っていこう。
年末年始は親族で不動産のことを話し合うには絶好の機会。
すっきりした気分でよいお年をお迎えください。








