先日、人口戦略会議から『地方自治体「持続可能性」分析レポート』が発表された。
なかでも人々の話題を呼んでいるのが「消滅可能性自治体」というキーワード。
何とも衝撃的なネーミングだ。
今回のレポートは、2014年の分析を汲んで10年ぶりにまとめられたもの。
全国744の自治体が名指しで、将来最終的に消滅する可能性があると予測された。
判断基準は「2050年までの30年間で、20~30歳代の女性の数が減少率50%以上」というものだ。
進学、就職により、一定数の若者が自治体の外へ転居するのはやむを得ない。問題なのはその後自治体に戻ってこない、もしくは都市部から地方に転入する人口が圧倒的に少ないという点だ。
人口維持ができている自治体の特徴のひとつに、女性が働きやすい、子育てしやすい環境施策が挙げられる。
大阪府寝屋川市は、減少率が前回調査の51%から35.3%に改善し、消滅可能性のリストから抜け出した。未就学児を遊ばせることができ、育児相談や一時預かりも対応可能な子育て支援センターが市内に7か所あり、第2子以降の保育料無料といった施策は市民から好評。1医療機関あたり月1回の医療費負担は500円までという子ども医療費助成制度もある。
ただ、こうした施策はある程度の人口や経済規模を備えた自治体こそ可能だが、みんながみんなできるとは限らない。
求められるのは雇用の場の創出だ。
地方移住したい人が一歩を踏み出せない大きな理由は、仕事がないこと。
子育て支援以前に、経済的に持続可能な生活条件を作り出すことが必要だ。
若者の転出が著しい自治体ほど、外からの移住転入に頼らざるを得ない。
人口移動報告で転入超過数の多い市町村には、定住政策に注力している自治体が多い。ただ、工場や事業所が所在する自治体もまた多い。
かつて2014年に福井県の西川一誠知事(当時)が「ふるさと企業減税」を打ち出して話題となった。東京以外の地方で法人税に税額控除を設定して東京より大幅な減税額を実現し、地方への企業誘致を進めようというものだ。
似た趣旨の制度で2024年3月末終了予定だった「地方拠点強化税制」が2年間延長された。このたび対象範囲に情報サービス事業が追加。さらに、地方拠点の整備完了前に新規雇用された従業員も雇用促進税制の対象となった。
これらの施策は人口減少の歯止めに一定の期待ができる。
ただ、もっと伸びしろを作っていいのではないか。条件付きで工場や販売所などを追加すれば、より効果的な人口確保につながる。
また、地元産業を後押しする先進的な教育機関を設置するのも一計だ。子育て世代の注目を集めることは間違いない。ただし、政治的な問題を未然に防ぐ監視は必要だが。