今回は土地の売買で実際にあったお困りごと相談をご紹介します。
バブル崩壊前のリゾートブームに乗って広大な原野を購入したBさん(75歳)。使わずじまいで数十年が経過して新オーナーを探していたところ、ようやくいいご縁が。しかし、その土地の権利証をどこにしまったのか思い出せず……

Q:30数年前に購入した土地を売りに出していたところ、幸運にも買い手が見つかりました。
ただ残念なことに土地の権利証が見つかりません。探せる所はすべて探したのですが……
権利証を紛失した場合、土地は売れなくなってしまうのでしょうか。
何か解決策があれば教えてください。

A:それは大変なことですね。もしまだ日にちがあるならもう一度探してみましょう。
どうしても見つからなければ……… 救済手段はあります。
多少手間ですが、書類のやり取りだけで移転登記を済ませることができます。

本題へ入る前にまず「権利証」が何かをおさらいしておきましょう。権利証とは、不動産の売買や相続などによって新たな登記名義人(所有者)となった人へ、登記所が交付する書類です。

2005年ごろ以降の権利証は「登記識別情報」という12桁の符号に形を変えました。もちろんそれ以前に発行された紙の権利証も有効です。
なお、法令上は今も昔も「登記済証」という名前です。ここでは一般的な呼び名である権利証で話を進めます。

不動産の所有者名義は不動産登記情報(いわゆる謄本)で確認できるため、他の誰に対しても正当な持ち主であることを主張できます。
ただ、誰か別の人に権利を移転させる、土地を担保に金融機関でお金を借りるといったアクションを起こすためには、権利証という具体的な書類が必要になります。

そのため権利証を紛失してしまうと、土地建物を売却する際に面倒なことが起こります。救済策を時系列で説明します。

STEP① 権利証をなくしたことを登記所に伝える
不動産の所在地を担当する登記所(法務局、支局、出張所など)に、権利証紛失の事実を電話などで伝えます。あなたの住所地の登記所ではありません
連絡先は法務省の「法務局・地方法務局所在地一覧」で探すことができます。

連絡を受けた登記所は、名義人確認のため書類「事前通知書」を発送します。事前通知書は直接あなたに届くこともあれば、近くの指定郵便局に局留めの場合もあります。登記所によって郵送方法が異なるので確認しておきましょう。ここでは郵便局へ受け取りに行く流れで説明します。

STEP② 到着通知書を受け取って郵便局へ連絡
指定郵便局からあなた宛てに「到着通知書」が送られます。この通知書は事前通知書とは別物です。事前通知書が郵便局に到着したことを示す、もうひとつの通知書です。そこには事前通知書を受け取る指定郵便局窓口が記載されています。受け取り方法を選択できる場合、ウェブ申込か電話で指定します。

STEP③ 事前通知書受け取りに必要な持ち物を準備する
到着通知書を受け取ったら、次の持ち物を準備します。
写真入り本人確認書類(運転免許証かマイナンバーカード)
 ※パスポートは所持人記入欄と住所記載がないと使えません。
 ※本人確認書類の氏名、住所は郵便物の宛名と同一でなければなりません。
印鑑(認印。なければサインも可)
到着通知書
なお、この事前通知書は本人限定受取郵便の特定事項伝達型で送付されるので、代理人が受け取ることはできません。必ず登記名義人本人が窓口へ行くようにしてください。

STEP④ 指定郵便局で事前通知書を受け取る
上記3点を持って受け取り場所の指定郵便局窓口へ向かいます。
本人確認のため、運転免許証などはコピーを取られます。確認後、登記所からの事前通知書を受け取ります。

STEP⑤ 事前通知書に署名捺印する
事前通知書の下の方にある回答欄に登記名義人の名前で署名捺印(通常は実印)します。

STEP⑥ 事前通知書を登記所に返送する
署名捺印済みの事前通知書を登記所に返送します。ただし、返送には期限があります。登記所から事前通知書が発送されてから2週間以内(国外在住の場合は4週間以内)に返送しなくてはなりません。受け取りから2週間以内ではないので要注意です。

これらの署名捺印、返送をしないかぎり、所有権移転登記は行われません。
期限内に一連の作業が終わるよう、速やかに対応しましょう。

以上の方法以外にも、司法書士との面談による本人確認によっても、所有権移転登記が可能です。
この場合は、売買契約担当の司法書士に依頼する必要があります。費用は5万~10万円ほど見ておきましょう。
無事に売買が完了することを祈ってやみません。

※本記事は、東京法務局杉並出張所、甲府地方法務局韮崎出張所での取材に基づくものです。時期や市町村によって法令、規則の運用が異なることがありますので、実際の売買時は各市町村の担当部署にご確認ください。

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