もし今あなたが住宅を手放そうとしているなら、ひとつ確認をおすすめしたいことがある。
その住宅を購入して何年何か月経ったかということだ。

住宅を売ればもちろんその分所得が増える。
その所得には税金がかかる。
ただ、もしかするとその税金は売却時期しだいで安くなるかもしれない。
分かれ道は所有期間が5年を超えるかどうかだ。

下の図を見てほしい。例えばあなたが2018年12月1日にその住宅を購入していたとする。
2024年3月15日に住宅を譲渡する場合、その年の1月1日時点でまる5年を超えて住宅を所有していることになり、所得金額に課される税金は約20%となる。

もし同じ住宅を2023年12月15日譲渡していたら税金は約39%だ。
いや、おかしいではないか、所有期間はまる5年を超えているから20%じゃないのか、と言いたくなるがそれは間違い。あくまで終期の基準日は譲渡年の1月1日。2023年1月1日時点では5年を超えていない。そのため税金は高くなってしまう。
たった3か月、いや1か月でも譲渡を遅らせるだけで税金がほぼ半減するのだ。

短期譲渡所得長期譲渡所得
5年以下所有期間5年超
39.63%税率20.315%
所得税:30%
住民税: 9%
復興特別所得税:0.63%(※)
税率内訳所得税:15%
住民税: 5%
復興特別所得税:0.315%(※)
1,188万9,000円譲渡価額:1億2,500万円
取得費:9,000万円
譲渡費用:500万円
のときの税額
609万4,500円
※所得税額の2.1%が復興特別所得税として別途徴収される。2037年(令和19年)までの措置

この税率が低い方の所得を長期譲渡所得といい、高い方の所得を短期譲渡所得という。
税率を分ける趣旨は、転売利益目的による短期間での売り買いを防ぐことにある。
土地建物を売ったときにその年の1月1日現在で所有期間が5年を超えていた場合、所得は長期譲渡所得となる。
税額の基準は売れた金額(譲渡価額)ではなく、そこから諸経費等を差し引いた金額(課税長期譲渡所得金額)だ。
税額は次のように計算される。

課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
所得税額=課税長期譲渡所得金額×15%
住民税額=課税長期譲渡所得金額×5%
復興特別所得税額=所得税額×2.1%

取得費とは、簡単にいえば購入時の費用。購入代金や各種手数料などを指す。
譲渡費用は売却時の必要経費。売ったときの仲介手数料や測量費、建物を取り壊したときの費用などが該当する。
通常特別控除は気にしなくていいが、マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除などが適用される場合に考慮する。

具体的に計算してみよう。
このたびの土地建物の譲渡価額が1億2,500万円、2018年に支出した土地建物の取得費が9,000万円、譲渡費用が500万円の場合、課税される所得金額は以下のとおりだ。

課税長期譲渡所得金額=1億2,500万円-(9,000万円+500万円)
          =3,000万円

この3,000万円の20.315%が支払うべき税金。金額内訳は以下のとおり。

所得税=3,000万円×15%
   =450万円

住民税=3,000万円×5%
   =150万円

復興特別所得税=3,000万円×0.315%
       =450万円×2.1%
       =9万4,500円

以上を合計すると売却時の所得にかかる税金は609万4,500円となる。

なお、上記所得金額を算出するときの取得費には注意が必要。
厳密にいうと、購入時の経費をそのまま当てはめるのではない。
会計上、建物の経済的価値は年々少しずつ下落するものと捉えられている。
いわゆる減価償却というものだ。
取得費はその減価償却費を控除した金額となる。

では減価償却費はどのように計算すればよいのだろう。
それはまたの機会に解説します。

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