日常生活で何の不自由もトラブルもなく、平和に使ってきた土地。
ところが、実はその土地の一部が公有地と判明。
さて、今後も同じように使いつづけることはできるのでしょうか。

Q:これまでずっと自分の土地だと思っていた場所が、実は県の土地でした。
道路沿いの細い土地で、20年以上前から畑や花壇に使っています。
私も近所の親戚も日常的に使っており、誰から何を言われることもなかったので、違和感も罪悪感も感じませんでした。
取得時効という制度を聞いたことがあります。この制度を使い、この細い土地を私の名義にすることはできるのでしょうか。
A:日常生活で平穏に使っていた土地が、急に自分のものでないとわかればびっくりしますね。
以前、取得時効をテーマに取り上げたことがありました。他人の土地でも粘り強く使いつづければ自分の土地になることがあるという、魔法のような制度でした。
ただこの制度は、どんな土地にも等しく通用するかというとそうではありません。対象の土地が公有地の場合、取得は少し難しくなります。
大きな理由は公平性の観点によるものです。
公有地を一市民の私物にするとなれば、他の市民が不公平感を感じてもおかしくありません。そのため、国や自治体は慎重に構えます。
ではどのような場合に取得時効が成立するのでしょうか。
この問題で代表的な判例(最高裁昭和51年12月24日)があります。これによると、次の4つの条件が揃えば取得時効を認めることができるとされ、その後の判例にも大きな影響を与えています。
- 長年にわたり事実上公の目的に使用されることもなく放置され
- 公共用財産としての形態、機能を完全に喪失し
- 他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく
- これを公共用財産として維持すべき理由がなくなった
以上の条件が揃うことで、公有地の公用が黙示的に廃止されたと判断されるのです。
少しわかりやすく説明します。大切なのは時系列です。
あなたがその公有地を使い始めるとき、すでにその土地が使われず放置されているという状況が必要です。道路や水路などに役立っている状態のまま、あなたがその土地を使い始めたなら、その時点で取得時効は成立しません。
また、見た目放置されていても、あなたがその土地を利用したことで地域住民が不便を感じたり、暮らしに支障が出たりすれば、やはりそこで取得時効は不成立となります。
「道路沿いの細い土地」をあなたが占有することで、車や人が往来しにくくなっていれば、時効取得できない可能性があります。
まとめると、占有開始前から一貫して公有地としての機能や価値を失っていて、公共財産としての存在意義がない土地は時効取得できる、といえるでしょう。
なお、公有地の取得時効にまつわる判例をみると、昭和51年12月から平成17年6月までの52例のうち、取得が肯定されたものは20あります。
取得時効が認められず、国や自治体に土地の払い下げを要望したケースもあります。
専門家の意見を聞き、まずは今後の動きを検討してみてください。