
住宅ローンの返済中に事業用物件を買いたい。
また、できれば現金の支出は抑えたい。
ところがその目的物件の担保価値はさほど高くない。
地方の物件を買い求めるときにありがちなパターンだ。
そんなときどうすればいいだろう。代表的な方法として下記の2種類が挙げられる。
それぞれの特徴、メリット、デメリットをみていこう。
《1》預金担保ローン
その名のとおり、借り入れする金融機関に現金を預けて融資の担保とする方法。定期預金の形式が一般的。預金残高の範囲内で新規借り入れを起こすことができる。
【メリット】
1.比較的簡単に済む
金融機関に口座を作って預けるだけなので、それほど手間がかからない。作業量が少ないことは大きなメリット。
2.顧客信用度を高められる
現金が金融機関指定の口座に置かれるという意味で、信頼性は抜群。特に初めて取引を行う金融機関、現住所から離れた場所の金融機関からの信用を得るには極めて効果的な方法といえる。
3.低めの金利で借りられる
金融機関からの信用を得やすいことから、ローン商品のなかでも比較的低い金利で借りられる。
4.信用情報への影響が少ない
現金を元手に開始するため、現在返済中の融資や他の金融資産への影響が少なくて済む。信用情報にも傷がつかない。
【デメリット】
1.現預金の自由度が下がる
定期預金担保として預けたお金は当然自由に使うことができない。他の大きな買い物をしたいと思ったとき、我慢する場面が生じるかもしれない。
2.返済遅延の際に目減りする
返済が滞ったときにその担保部分から差し引かれ、預金が目減りする可能性がある。
《2》第二抵当権設定によるローン
現在返済中の不動産融資に新たな抵当権を設定し、不動産の資産価値の範囲内で新規借り入れを起こすことができる。第一抵当権が抹消された後に、第二抵当権者(金融機関)が繰り上がって主たる抵当権者となる。
【メリット】
1.現預金の自由度を確保できる
現有不動産を元手に新規借り入れを起こすため、今の預金に手を付けなくて済む。預金残高が目減りしないのは大きなメリット。
2.不動産売却をせずに資金調達できる
預金に影響がないことに加え、現有不動産を売却する必要もない。資産整理することなく新たに資金を調達することができる。
【デメリット】
1.ローン返済終了後も別のローンが続く
第一抵当権の抹消後、第二抵当権が第一順位に繰り上がって借り入れが継続する(順位上昇の原則)。
2.金利が高くなりやすい
不動産の担保価値よりも第一抵当権者の貸出残高が高い場合、第二抵当権者は貸し倒れのリスクが高まる。そのため第二抵当権による融資は一般の住宅ローンよりも高金利となる傾向にある。
3.融資金額が低くなりやすい
第一抵当権者の貸出残高を差し引いた後の不動産担保価値に設定されるため、融資金額が低めになりがち。希望の借り入れラインを満たすかどうか事前の確認が重要。
以上のことから、もし現金に余力があるなら《1》の預金担保がおすすめだ。
現有不動産の借入残高に比べて新しい物件の購入費用が明らかに安いのであれば、《2》の第二抵当権の活用も視野に入れたい。
近い将来に多額の現金を必要とするイベントがあるかどうか。その点も大きな要素となるので、人生のステージに合わせて適切に選択することが重要だ。