今日は、土地の売買で実際に私が受けた相談例をご紹介します。
田舎暮らしをしたい、家を建てて大きな庭で畑をやりたい、という思いから土地を買ったAさん(80歳)。しかし、新築を断念したまま月日は流れ……その土地は農地でした。

Q:ずいぶん前に農地を買い、そこに家を建てたかったので農地転用許可をとりました。
ところが健康上の都合で、結局建てることを断念し、20年以上の月日が流れてしまいました。
自分で使うあてがないので別の方に譲ろうと思いますが、宅地として売れるでしょうか。

A:せっかく素晴らしい環境で新生活を始めるつもりだったのに、それは残念でしたね。
まず、あなたがこの土地をもちつづける場合について考えます。
今もそこに家を建てられるかどうかですが、結論からいうと建てられます。
いったん農地法第5条許可(所有権移転に伴う、農地の宅地への転用許可)を譲受け時にとれていれば、その効力が消えることはありません。
ただ、当時の建設計画のもとに建てることが条件となります。
次に、この土地を誰か別の人に譲るときのことを考えます。
この場合、宅地として売ることはできます。ただ、新しく譲り受けた人は、5条許可をとりなおす必要があります。
あなたが土地を取得したときから10年以上経っていれば、住宅の計画変更が認められ、農地転用許可をとる下地は出来ています。
10年未満だと計画変更ができません。農地を宅地としてみだりに転売することを防ぐためです。
いちばん労力もコストも節約できるのは、あなたの名義で住宅を建ててしまい、完成後に土地建物込みで所有権移転する方法です。ただしこの場合は、次の買主さんの同意が必要になります。
あと、大事な条件がもうひとつあります。場所ごとに市町村が定めた、宅地の最低面積です。ご相談の土地がその最低限度を超えているか確認してください。そうでなければ、次の買主さんは家を建てられず、途方にくれてしまいます。くれぐれもご注意を。

※本記事は、北杜市役所農業委員会での取材に基づくものです。時期や市町村によって法令、規則の運用が異なることがありますので、実際の売買時は各市町村の担当部署にご確認ください。

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