「隣の土地は借金してでも買え」ということわざがある。
不動産の仕事をしていると、まさしく地で行くエピソードにしばしば出合う。
今回はそんな実話を少々。

リタイア後の晴耕雨読的な生活を求め、とある別荘地に物件を求めたAさん。
周囲の親切な助けを借りながら、土地内の立木を伐採し、素晴らしい眺望を得た。
すると、それまで木立で隠されていた隣の古民家が突如として姿を現した。
調べてみると、その古民家は市の所有物であり、一定のリフォームがなされて今後の活用が検討されていたが、具体的なアクションがなく、放置されているということがわかった。
あまりお金に糸目を付けなかったと見え、浴室やトイレの設備はハイグレード。
「これは使える」と考えたAさん。
早速市に購入を打診し、無事手に入れることができた。
そこから進めたのが、旅館業の営業許可申請だった。
室内清掃、インテリア搬入、不燃性素材の導入、消防法の看板設置など、必要な段取りをすべて整え、無事に許可取得。古民家ホテルの開業を迎えた。

当初は単価を抑え、敷居を低くして流行らせようとしたが、これにはひとつ問題が。
あまり経済力がなく、マナーのよろしくないグループに占拠され、チェックアウト後の清掃がたいへんな重荷となったのだ。

これでは体がもたないと判断し、思い切って単価を1.5倍から2倍に上げてみた。
するとどうだろう。
日本の歴史、自然に関心をもつ海外の富裕層からの予約が相次ぐようになり、予想を超える集客につながった。
また、こうした人たちは旅慣れているので、部屋の使い方も極めて美しい。
売上増とコスト減を一挙に叶えたというわけだ。

持ち前のコミュニケーション力とホスピタリティも相まって、今やAさんは予約サイトのスーパーホストとして名を馳せている。
全世界的なコロナ禍が終息し、予約状況はもう復調したとのことだ。

また、Bさんはとあるスキー場内で空き物件を購入し、ペンションとして営業開始した。
すると間もなく世にキャンプブーム到来。
夏場に目の前のゲレンデを一括で借り上げ、キャンプ場として営業したところ、これが大当たり。
次の段階を見据えて、隣の裏山を買い足し、さらなる拡大を目指している。

AさんBさんとも、その成功は行動力と決断力の賜物だが、観察眼もまた大きな要因だ。
(なお蛇足ながら、ことわざとは違い、両名とも無借金で隣地購入している)
物件を購入する際は、どうしてもネガティブ要素の確認と払拭に動きがち。
しかし、さらに価値を高める要素はないだろうか、と目を配るポジティブな態度もあっていい。

このお二人は、かつて私から物件を買ってくださったお客様。
さらに詳しくお話を聞いてみたいという方には機会をセッティングしますので、ご連絡ください。

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