全国各地でクマによる被害が増えています。
人身被害は言うまでもなく、クマが家に入ってきて中を荒らしてしまうというケースも発生しています。
ここではクマによる家屋の損壊が火災保険の対象になるのかについて考えたいと思います。

例えば、玄関の扉を開けたところでクマに遭遇し、驚きのあまり扉をすぐ閉めることができず、クマが家の中に侵入して窓ガラスや壁を破壊してしまったという事案。
このような場合、破損箇所の修理代は火災保険で補償されるのでしょうか。

結論からいえば、保証される可能性は低いといえます。
保険約款には「害獣による直接被害部分については免責」という文言が書かれているかもしれません。
これによると上記のケースでは保険による建物の補償は困難となります。

ただ、あきらめるのはまだ早いのです。
補償されないのはあくまで「直接被害部分」です。
ネズミがコードをかじった、排水管を噛んで壊したといった場合、損傷した物自体の補償はされません。
ところが、これによって壁や床にカビが生えてしまうという「二次被害」が起こったとき、その修理代金は火災保険でカバーされるかもしれません。

なお、保険金請求を考えるとき、下記条件に当てはまるか確認しましょう。

  • 不測かつ突発的な事故であること
  • 重過失、故意による損壊ではないこと
  • 経年劣化以外の要因があること
  • 請求時が損壊の発生から3年以内であること
  • 補償金額は保険の範囲内であること

このうち最も重要視されるのは「不測かつ突発的な事故」かどうかという点です。
建物は年が経つと少しずつ傷んできます。
オーナーが建物の穴やすき間をふさぐなどして適切に管理していれば、動物の侵入を防止できて獣害は起こらないはず、という考え方が根本にあります。
そのため獣害は不測かつ突発的ではない、と捉えられるのです。
また、動物は言葉で正確にコミュニケーションをとれる相手ではないので、補償される被害の線引きも難しくなります。
こうした背景から一律「害獣による直接被害部分については免責」とされていると考えられます。

また、最近は「クマ保険」という言葉が聞かれます。
これは個人がクマ被害に備えて加入するものではありません。
緊急銃猟で撃った銃弾が跳ねて建物を破壊することを想定し、その建物を補償するために自治体が加入するものです。
報道によれば2025年10月末までに200を超える自治体が加入しているとのこと。
クマ被害が続出している地域で一日も早く平穏な暮らしが取り戻せるよう祈っています。

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