以前お話した、不動産売却時の税金を約半分にする方法
住宅を譲渡する場合、その年の1月1日時点でまる5年を超えて住宅を所有していれば、譲渡所得に課される税金が約20%になる、という内容だった。
ただ、税金の計算式に含まれる建物の取得費はある要素で変動する。
それが今回のテーマ「減価償却費」だ。

まず減価償却とは何か。
実はこの言葉、何度聞いても好きになれない。単語のイメージがつかみづらいのだ。
いや、好き嫌いで片づける問題ではないので先を進める。

減価償却とは、建物や機械、備品などの資産価値を長期間かけて少しずつ減らしていく会計上の手続きだ。
実際の劣化や経年変化ではない。
どんな物も種類ごとに寿命が決められていて、最終的には経済的価値が限りなくゼロに近づく。物としての寿命ではなく、あらかじめ設定された経済的寿命だ。
これを耐用年数という。
パソコンなら5年、普通自動車の新車なら6年、居住用の木造戸建住宅なら33年という具合だ。
1年で目減りする価値の割合を償却率といい、これは以下の式で導かれる。

償却率=1÷耐用年数

木造戸建住宅なら1÷33=0.0303……ここは切り上げられ0.031。毎年3.1%ずつ価値が差し引かれる。その毎年差し引かれた数字の現時点までの合計が減価償却費だ。木造戸建住宅の場合、減価償却費は下記のとおり計算される。

減価償却費 = 取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数

償却率は買ったときの建物価格ではなく、その90%の価額にかかる。居住用住宅の価値の目減り分、減価償却費は95%でストップするよう制度設計されている。具体例を挙げて計算してみよう。
例)建物の取得価額:3,000万円
  構造:木造
  耐用年数:33年

経過年数(※)残存価額減価償却費(A)Aの計算式
29,163,000円837,000円3,000万円×0.9×0.031×1
28,326,000円1,674,000円3,000万円×0.9×0.031×2
27,489,000円2,511,000円3,000万円×0.9×0.031×3
26,652,000円3,348,000円3,000万円×0.9×0.031×4
25,815,000円4,185,000円3,000万円×0.9×0.031×5
24,978,000円5,022,000円3,000万円×0.9×0.031×6
1021,630,000円8,370,000円3,000万円×0.9×0.031×10
323,216,000円26,784,000円3,000万円×0.9×0.031×32
332,379,000円27,621,000円3,000万円×0.9×0.031×33
341,542,000円28,458,000円3,000万円×0.9×0.031×34
351,500,000円28,500,000円3,000万円×0.95
401,500,000円28,500,000円3,000万円×0.95
(※)1年未満の端数は、6月以上は1年、6月未満は切り捨て。

ここで前の内容に戻る。長期譲渡所得の条件を満たす不動産を売ったとき、課税対象の金額は下記のとおりだ。

課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除

上の「取得費」は下記のように計算される。

取得費=土地購入価額+建物取得費
   =土地購入価額+(建物購入価額-減価償却費

この太字部分が今回のテーマにつながる。建物取得費は最低でも買った価格の5%は残るというわけだ。
なお、土地の価値には経年で目減りするという概念がないため、減価償却が適用されない。

土地建物購入後、
・6年経過して売却
・譲渡価額が1億2,500万円
・支出した土地建物の取得費が9,000万円(うち土地6,000万円、建物3,000万円)
・譲渡費用が500万円

とした場合、課税される所得金額は以下のとおりだ。

課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)
          =譲渡価額-(土地購入価額+[建物購入価額-減価償却費]+譲渡費用)
          =1億2,500万円-(6,000万円+[3,000万円-502万2,000円]+500万円)
          =1億2,500万円-(6,000万円+2,497万8,000円+500万円)
          =3,502万2,000円

この3,502万2,000円の20.315%を譲渡所得の税金として支払うことになる。金額内訳は以下のとおり。

所得税=3,502万2,000円×15%
   =525万3,300円

住民税=3,502万2,000円×5%
   =175万1,100円

復興特別所得税=3,502万2,000円×0.315%
       =525万3,300円×2.1%
       ≒11万319円(1円未満切り捨て)

以上を合計すると売却時の所得にかかる税金は711万4,719円となる。
最後に木造以外の建物も含めて耐用年数と償却率を。

建物の構造耐用年数償却率
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造70年0.015
れんが造、石造又はブロック造57年0.018
金属造骨格材の肉厚4mm超51年0.02
骨格材の肉厚3mm超4mm以下40年0.025
骨格材の肉厚3mm以下28年0.036
木造又は合成樹脂造33年0.031
木骨モルタル造30年0.034

実は居住用以外の建物については別の計算式が存在します。
また長くなるので今回はここまでに。

おすすめの記事