長らく大切に使われてきた故郷の家。子どもたちは都会へ働きに出て、このたび親たちも施設へ入所。初めて空き家となってしまいます。このあと果たしてどうしたものか……というよくある話題。一緒に考えます。

Q:実家にひとりで住んでいる母親が老人ホームに入ることになりました。
このあと家には誰も住まなくなってしまいます。
残された土地建物は売った方がよいでしょうか。もちつづけるほうがよいでしょうか。

A:多くの人が経験する分岐点ですね。悩むところです。
結論から申せば、売る方がメリットは大きいといえます。

メリット
1.売却代金を施設の費用に当てられる
まず大きなメリットは、売却代金を施設の費用に当てられるという点です。
施設の種類は公的な特別養護老人ホーム、民間の有料老人ホームなどさまざまですが、特に民間施設は初期費用で数千万円かかることが珍しくありません。
売却代金を初期費用や月額費用に当てれば、貯蓄や年金を切り崩さずに済みます。

2.家の維持費がなくなる
固定資産税、リフォーム費、庭の管理費などが代表例です。
家が倒壊したり、高い木が倒れ落ちたりして隣地に迷惑をかけてしまうケースも。
こうした思わぬ出費を抑えることができます。

3.居住用財産を譲渡したときの特別控除が受けられる
居住用財産を売ったときの「3000万円特別控除」が使えるという点もメリットです。
これは
(1)売主本人が所有して住んでいたこと
(2)売主本人が住まなくなってから3年を経過した日が含まれる年の12月31日までに売却を完了すること
が条件となります。
建物を取り壊し、更地として売る場合は条件がプラスされます。取壊し時点から1年以内に土地の売買契約を締結する必要があるのです。
また、更地にしてから人に貸したり駐車場収入を得たりすると控除が受けられなくなるので、注意が必要です。

4.認知症によるリスクを回避できる
もしお母様が認知症にかかってしまうと非常に売りづらくなります。そうなる前に売っておけば多くの問題を避けられます。
不動産の売主は原則所有者本人であり、委任状を書いて誰かに売却を委任する場合でも、本人の意思能力が必要となります。つまり認知症になってから委任状を書いては遅いわけです。
そのときはそのときで対策はあるのですが、かなり厄介です。
お元気なうちに売却できれば、それに越したことはありません。

そのほか、防犯上のトラブルを抑えられること、特定空き家や管理不全空き家に指定されて固定資産税が6倍に跳ね上がる可能性がなくなること、といったメリットがあります。
デメリットも見ておきましょう。

デメリット
1.自宅へ戻りたいときに戻れない
2.万一の際の遺産総額が相続税の基礎控除額を上回るとき、現金には相続税がかかる
といったところです。
また、ご実家が遠隔地にあるとすれば、巨大地震などに遭ったときの避難場所がひとつ減るというデメリットも考えられます。

何よりも大切なのはご親族の間で揉めないことなので、しっかり話し合って結論を出してから動いてくださいね。

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