近ごろ学校では「あだ名禁止」の風潮が強まっている。お互い名字で「○○さん」と呼び合うルールがじわじわ浸透しつつある。
ところが大人になれば、陰でヒソヒソ「○△課長」「●◇オくん」なんてザラだ。
それに、田舎にだってやっぱり「あだ名文化」はある。

私はかつて長野県のある山里と東京を行ったり来たり、いわゆる二地域居住の暮らしをしていた。
長野の拠点は温泉付きのリゾートマンション。温泉はマンションの住民のみならず、近隣の人たちも有料で入浴できるシステムだった。
少し塩気のある泉質は、体をぽかぽか温めてくれる。私も例に漏れず、気に入ってよく浸かっていた。

しばらくすると、ある人がそっと教えてくれた。なんと私に「あだ名」が付いているらしいことを!
「ほら、あんた脱いだ服をきちんときれいに畳むでしょう」
それでついたあだ名が「タタムくん」だというのだ。

さほどきれいに服を畳んでいるつもりはないし、そもそも誰が見てるんだ? 正直、少し気色悪い感じもした。

田舎は娯楽が少ないから人のうわさ話に花が咲きやすい、なんてことが言われる。
田舎に限ったことではないが、当たらずとも遠からずだ。
まあ、人間が人間に興味をもつのは当たり前。特に都会からふらっとやってきた人物は注目を集めやすい。これは致し方ないこと。
あまり深く考えず「タタムくんでーす」とおどけるくらいの方がちょうどいいのだ。

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