令和6年能登半島地震の発生により、地震への備えに再び注目が集まっている。
なかでも建物の補強工事は大きなテーマのひとつだ。

建物の補強には大きく分けて耐震、免震、制震の3パターンがある。
名前の雰囲気が似ていてどれが何なのかこんがらがってしまいそうなので、ここでおさらいしておこう。

特徴メリットデメリット
耐震構造建物自体を強化することで、地震による損壊を回避できる低コストで工事が簡単極度な揺れの場合、梁や柱など構造部分にダメージが残る可能性あり
免震構造建物と土台を切り離すことで、建物本体に地震の揺れを伝えない建物自体の揺れが小さく、家財の転倒、落下が少ないコストがかかる。強烈な台風などで揺れることがある
制震構造建物に設置した装置により、地震エネルギーを吸収し、衝撃を和らげるそこそこのコストで安定した効果が得られる装置によっては維持費がかかり、複数回の地震に耐えられない可能性あり

耐震補強工事は比較的低コストで建物を強固に仕上げることができる。反面建物の柔軟性を失わせるため、運が悪いと構造部分が傷を負う可能性がある。

免震構造はタワーマンション、オフィスビルなど大規模な建物を中心に採用されるもので、建物自体の揺れをかなりの割合で防ぐことができる。ただし、コストがかかるので通常の一戸建て住宅で使うには少し二の足を踏む。

これら2つのいいとこどりのような存在が制震構造だ。
制震装置のバリエーションをさらにまとめてみた。大きく分けると3つの種類がある。

特徴メリットデメリット
ゴムダンパーゴムの伸縮力を利用して地震の衝撃を吸収する度重なる振動に長期間耐えられるサイズが大きく、施工箇所が限定される。コストがかかり、気温変化に弱い
油圧ダンパーオイルを内蔵した筒の中でピストンが動いて地震の衝撃を吸収する小型サイズ。建物の外側で簡便に設置できる。度重なる振動に耐えられる1本あたりの衝撃吸収力が弱く、設置本数がかさみやすい
鋼材ダンパー金属の耐性と柔軟性を利用して地震の衝撃を吸収する比較的低コスト。設置しやすい耐久性が低いため、交換頻度が高め

それぞれ長所と弱点がある。長期間安心して複数回の地震に備えたければ、ゴムダンパーを選ぶのが無難かもしれない。誕生してから長らく持ちこたえてきた実績もある。ただし、それなりのコストは必要だ。

各種ダンパーとも技術革新を遂げ、進化している。これまでの良さを守りながら、さらにメリットを広げている商品もある。紹介内容を見れば、いいことづくめに思えてしまう。
ただ、歴史の浅い商品にはひとつだけ弱点がある。実績の少なさだ。これから度重なるかもしれない衝撃にどこまで耐えることができるか。それは使ってみないとわからない。
この点を念頭に置きながら、主流となりつつある方式をいくつか見ておきたい。

TRCダンパー

特殊粘弾性ゴムを使用した制震ダンパー。運動エネルギーを熱エネルギーに変換するゴムの特性を生かしている。
地震による衝撃を熱に変えてダンパー内に吸収し、建物の揺れを低減させる点が最大の特徴。
既存のゴムダンパーよりも温度変化に強く、昨今の異常気象に耐えやすいと考えられている。
また、省スペースで設置しやすく、本数を少なく抑えられるため、比較的低コスト。
設置前に無料シミュレーションを利用できるという点もメリットだ。

evoltz(エヴォルツ)

自動車のショックアブソーバーの世界最高峰メーカーと評されることもあるビルシュタイン社の技術を取り入れた油圧ダンパー。
わずか3ミリレベルから揺れを検知し、大きな揺れにも対応できる特許技術「バイリニア特性」を有し、建物への負担を大幅に減らすことができる。
こちらも温度変化に強く、-20℃から80℃の環境温度試験に耐えた実績がある。
10年保証が付いているのも心強い。

これら以外にもさまざまな商品がある。予算、規模などに応じて最適の方法を探してみよう。

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