不動産売買のなかで最重要段階とされるのが、代金決済と物件引渡しの作業。
一般的に「決済引渡し」といわれるものだ。
代金決済とは、買主が売買代金を売主に支払うこと。
物件引渡しとは、実作業として売主が登記識別情報(権利証)を買主側へ交付すること。
各々がこれらを行うことによって、実質的な権利移転は完了する。

この作業、売主買主双方が顔を合わせて同時に進めることが原則とされている。
もし互いが顔を合わさなければ、買主から代金振込を受けた売主が権利証を手渡さず、どこかへ逃げたり別の人に売り渡したり(二重売買)する危険性がある。これは買主にとってとんでもないリスク。
もちろん逆もありうる。
対面で同時進行させるのは、双方が勝手な動きをして契約をパーにさせないためのいわば保険だ。

ただ、どうしても決済引渡し時に売主買主が対面できない場合がある。
年齢や身体上の理由、地理的な都合などで会えないというパターンだ。
ではこのようなときどうすればいいのだろうか。
解決するための方法を見ていこう。

1.信頼できる人に代理権を与える
誰か代わりの人にやってもらうのは、最も簡単な方法だ。
簡単である以上、その相手が信頼できる人でなければならない。
いい加減な人に頼むと、それこそ持ち逃げされるリスクが生まれる。
間違いが起きないと確信できる親族に依頼するのが鉄則だ。
親族間であっても委任状を作って署名捺印し、決済当日受任者が必ず持参すること。

2.司法書士に依頼する
所有権移転は、司法書士が法務局で所有権移転の手続きを行うことで完結する。
そのため、売主が登記識別情報を持ってこられない場合、事前に担当の司法書士へ預けるという方法も考えられる。
郵送だと紛失逸失のリスクがゼロとはいえないので、手渡しが望ましい。
売主にとっても、相手の顔や名前を認識できるメリットがある。
頼りになる親族がいない場合、最もオーソドックスな方法といえる。
直接預ける際、通常同時に必要書類の署名捺印も求められるので、実印や印鑑証明書など他の持ち物も忘れないようにしよう。

これら2つの方法はどうしても都合がつかないときの最終手段。
不動産売買は権利が移転するだけでなく、土地建物という具体的なものの移転でもある。
建物に異常がないか、土地に残置物がないかなど、当日お互いが肉眼で確認することは重要な意味をもつ。
最大限にスケジュール調整してお互いが立ち会うよう努めたい。

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