道を歩いていると建築現場で「建築計画のお知らせ」という白い看板を見かけることがある。
この看板、一定規模以上の建物を建てる際には設置する義務がある。
ただし立てればいいというわけではない。
当然のことながら書く内容もちゃんと決まっている。
そこには、建物の規模構造に加え、建築主、設計者、工事施工者といった人たちの名前も明記するよう建築基準法で定められている。

ところが近頃、「建築主」の部分が空欄あるいはイニシャルの看板もちらほら見受けられる。
本来建築主の欄には、建物完成時の登記名義人、簡単にいえばそこに住む人の名前を記載するもの。
夫婦でお金を出し合って建てるなら、夫婦両名の名前を書くことになる。
空欄やイニシャルに置き換える理由には、
・個人情報保護の観点から実名を知られたくない。
・実名を知られることで、何らかの犯罪に巻き込まれたくない。
などが考えられる。
とはいえ、これは明らかな法令違反。
大手ハウスメーカーで堂々と行っている例があるにせよ、どこがやろうと違反は違反だ。
是正されないかぎり、行政から重ねて指導を受けることになる。

では実名を出す理由って何なの?という話になる。
いいほうに考えればこんなプラス要素がある。

1.周辺住民の不安をなくす
新しい家が建ちだすと当然周辺の人々は「誰が引っ越してくるの?」と考える。
もし建築主名を匿名にすると、建てる側は安心かもしれないが、迎える側は不安を抱くことになる。
意地の悪い人だと反社会的団体の拠点という妄想まで抱きかねない。
名前を書くことで一帯の人間関係を円満にすることができる。

2.責任の所在として記載する
建築中に事故が起こると、多くの場合工事施工者が責任を負うのだが、内容によっては建築主が責任をまぬかれない場合もある。
「しかるべき時は私も責任を負います」という意思表示の意味合いも含んでいる。
法律の根拠としてはこの点が大きいと思われる。

3.名刺代わりに使う
新たに引っ越してくればご近所へのあいさつをすることになるだろう。
ただ忙しくて時間がとれない、どの範囲まであいさつすればいいのか不安、といったケースも。
そこで名前を出しておけば、いざあいさつできなくてもそれだけで名刺代わりになる。
「皆さんのことを考えていますよ」という開かれた気持ちの表れになるのだ。

ただし、実名省略を許されることもある。
建築主がDV被害にあっている場合などだ。

たとえ疑問を覚えても、決まり事には理由がある。
気持ちよい生活環境を整えるため、作法は守ることをおすすめする。

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