2021年7月静岡県熱海市で土石流災害が発生し、28 名の命が犠牲となった。
粗悪な造成工事が一因であるこの事故がきっかけとなり、新たな法律が作られた。それが宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法、以下新法)だ。

それまでの宅地造成規制法で指定されていたのが、宅地造成工事規制区域。
この区域は、盛土、切土といった土地の形質変更による災害発生を防止するため、宅地造成を行う際には予め都道府県知事等の許可を得なければならないエリアだった。

法改正により、新法による指定区域は、
A.宅地造成等工事規制区域
B.盛土規制区域

の2種類に増えた。
各自治体のホームページを見るとわかるが、基本的にほぼすべての地域が上のいずれかに色分けされる。つまりもはや特別な区域ではないというわけだ。

ざっくりいうとAはすでに宅地化されている、または宅地化されそうなエリア、Bは宅地からは距離があるけれど土砂の影響を及ぼしそうなエリアだ。

新法のポイントは主に以下の3点。
1.盛土等の安全性の確保
地形、地質などに応じて災害防止のための許可基準を設定する。具体的には、擁壁の設置、地盤の締め固め、排水施設の設置といった内容だ。
土地所有者はこれに同意しなくてはならない。また、周辺住民への事前周知も要件となる。
施工中は定期検査、中間検査、完了検査により安全基準への適合が確認される。
また、盛土に限らず単なる土捨て行為や一時的な堆積も規制対象となる。これが「盛土『等』」たる所以だ。堆積の高さ、斜面勾配、境界柵の設置などがチェックされる。

2.責任の所在の明確化
盛土等で形質変更が行われた土地の所有者、管理者、占有者は、常にその土地を安全な状態に維持しなくてはならない。
災害防止を目指すためには、現在の関係者だけでなく、当時盛土等を行った業者、過去の土地所有者たちにも是正措置や施工停止を命令できる。
過去の土地所有者も所有者責任を免れないというわけだ。

3.実効性のある罰則
上記の関係者に、無許可もしくは安全基準違反、命令違反などが認められた場合、最大懲役3年、罰金1000万円が課せられる。
これは条例による罰則の上限を超える高い水準に強化されている。
法人への抑止力も高めるため、法人重科は最大3億円だ。

土地所有者や施工者にとっては厳しい法改正となったが、その分土地を買って家を建てる立場にとっては安心材料が増えた。
なお、あの日不動産では売買契約時にこうした法改正の説明も行いますのでご安心ください。

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