
不動産の売買では、売る人買う人双方がお互いにやるべきことをやって最終的に物件引渡しを迎える。
ただ、各々の商習慣に違いがあるとちょっとしたことで「はて?」と立ち止まるシーンも。その例のひとつが、領収書の受け渡しだ。
売買代金を現金で授受した場合、もちろんそのやり取りの証として売主から買主に領収書が交付される。
では、銀行振込で授受が完了した場合、果たして売主は領収書は発行すべきだろうか。
「入金のときに振込明細書が発行されるんだから、これが振り込んだ証になるはず。領収書は要らないのでは?」
という声も聞かれる。
そのとおり、実務上は銀行振込の際、領収書の受け渡しを省略することが多い。振込明細書が出るほか、買主側で預金通帳またはネット上の明細履歴を確認すれば、もれなく着金が確認できる。それならなるべく手間をなくす方がミスは減るし、お互いにプラスだという考え方には一理ある。
ただし、買主が領収書の発行を求めた場合、売主はこれを拒むことができない。民法には次のような定めがある。
弁済をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書の交付を請求することができる。
民法第486条1項
習慣として省略される領収書も、買主からひとたび求められると売主に発行義務が生じるというわけだ。
これは銀行振込のときも例外ではない。
なお、領収書に必ず記載する内容は次のとおり。
- 発行日(一般的に代金の受領日)
- 宛先となる支払者名(ここでは買主名)
- 取引金額
- 但し書き(代金授受の根拠内容)
- 支払いを受けた発行者名(ここでは売主名)
- 収入印紙と割印(個人の居宅などの非営利売買を除く)
なお、領収書に発行者名の印鑑は必須でないものの、通常は押されている。
特に多額の金銭が動く不動産売買の場合、証拠性を高めるため実印を押すケースが多い。
領収書に貼る収入印紙、金額はこちらでご確認を↓