移住先について考えるとき、頭をよぎる要素のひとつが医療費。
今回は子どもの医療費助成制度に焦点を当ててみたい。

先日のニュース。
香川県では2023年8月から、全市町で18歳年度末(18歳時の3月31日)までの医療費が全額無償となる。
高校卒業時まで医療費負担がなくなるというわけだ。
所得制限や自己負担がない全自治体での完全無償化は、福島県、栃木県に次ぎ、全国で3例め。
直後の10月からは、群馬県でも18歳年度末までの完全無償化が実施される。
また、この4月から東京23区で同様の措置が始まったことも記憶に新しい。

地方、都市部にかかわらず、子育てしやすい環境づくりに自治体が力を入れてきている。
理由は言うまでもなく、全国的な人口減少であり、ぜひわが県わが町に住んでほしいという気持ちの表れである。

この記事の末尾に、都道府県ごとの「乳幼児等医療費援助」つまり子ども医療費の助成状況を一覧表を添付した。
厚生労働省出典だが、2021年3月末時点のデータなので現状と若干差異がある。
ただ、ご覧のとおり医療費助成は自治体によって内容がばらばらだ。

自治体各々の事情によって
(1)子どもの対象年齢
(2)通院、入院の別
(3)対象家庭の収入金額の上限
(4)現物支給か償還払いか
(5)全額支給か一部自己負担か
といった点に違いが表れる。
現物支給とは窓口での支払いが無料となる場合をいい、償還払いとは一旦受診者側が支払いを負担し、あとから費用がもらえるというものだ。

また、都道府県よりも市町村がさらに手厚く補助している例は多い。
厚生労働省の別統計結果によれば、都道府県だけで見た場合、通院は就学前まで、入院は就学前までもしくは15歳年度末までの助成が多数派。
しかし、市区町村でみると、通院は15歳年度末まで、入院は18歳年度末までの助成が最多なのだ。
もちろん都道府県の助成で足りない分は、市町村の負担となる。
したがって、これらの市町村は比較的財政面で豊かな所が多い。
今回の香川県は、県が医療費補助を小学3年生の年度末まで広げたことで、各市町に財政的な余裕が生まれ、年齢上限のアップにつながったようだ。

では補助の薄い地域が財政面で苦戦しているのかといえば、そうとも言い切れない。
住民の多くが経済的に豊かで医療費の支払いにあまり苦労していない、もしくは医療費補助を呼び水に使うほど人口減少に苦しんでいないという見方もできるのだ。

こうした地域差は本来好ましいものではないが、地方自治の裁量を考えればやむをえないところ。
候補地選びの判断材料に数えておいて損はない。
なお、通院にかかる最新の助成事情を、市区レベルまで詳しくまとめたサイトがあるので、最後に紹介しておこう。

都道府県における乳幼児等医療費援助の実施状況(2021年4月1日現在)

表内凡例:○=あり、-=なし

都道府県対象年齢対象年齢所得制限所得制限一部自己負担一部自己負担注記
通院入院通院入院通院入院
北海道就学前12歳年度末 
青森県就学前就学前 
岩手県就学前12歳年度末※1
宮城県就学前就学前 
秋田県15歳年度末15歳年度末※2
山形県9歳年度末15歳年度末 
福島県18歳年度末18歳年度末※3
茨城県12歳年度末18歳年度末 
栃木県12歳年度末12歳年度末※4
群馬県15歳年度末15歳年度末 
埼玉県就学前就学前 
千葉県9歳年度末15歳年度末 
東京都15歳年度末15歳年度末※5
神奈川県就学前15歳年度末※6
新潟県※7
富山県4歳未満就学前※8
石川県4歳未満就学前 
福井県15歳年度末15歳年度末※9
山梨県5歳未満就学前 
長野県就学前15歳年度末 
岐阜県就学前就学前 
静岡県18歳年度末18歳年度末 
愛知県就学前15歳年度末 
三重県12歳年度末12歳年度末 
滋賀県就学前就学前 
京都府15歳年度末15歳年度末 
大阪府就学前就学前 
兵庫県15歳年度末15歳年度末※10
奈良県15歳年度末15歳年度末 
和歌山県就学前就学前 
鳥取県18歳年度末18歳年度末 
島根県12歳年度末12歳年度末 
岡山県就学前12歳年度末 
広島県就学前就学前 
山口県就学前就学前※11
徳島県15歳年度末15歳年度末 
香川県就学前就学前 
愛媛県就学前就学前※12
高知県 就学前就学前※13
福岡県15歳年度末15歳年度末※14
佐賀県就学前就学前 
長崎県就学前就学前 
熊本県4歳未満4歳未満 
大分県就学前15歳年度末 
宮崎県就学前就学前 
鹿児島県18歳年度末18歳年度末※15
沖縄県就学前15歳年度末 
厚生労働省 令和3年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」より

※1  3歳未満、本人及び主たる生計維持者が市町村民税非課税の場合は一部自己負担なし。
※2  0歳児及び市町村民税所得割非課税世帯は一部自己負担なし。
※3  市町村への補助対象年齢は、小学校就学前及び小学校4年から18歳年度末まで。
※4  乳幼児は一部自己負担なし。
※5  乳幼児は一部自己負担なし。
※6  4歳未満は一部自己負担なし。
※7  交付金のため、対象年齢・所得制限・一部自己負担に関する規定なし。 交付金の規模は12歳年度末までに相当。
※8  乳児は一部自己負担なし。
※9  乳幼児は一部自己負担なし。
※10  乳児は所得制限なし。
※11  3歳未満児及び調剤薬局の一部自己負担なし。
※12  3歳未満児は一部自己負担なし。
※13  乳児は所得制限及び一部自己負担なし。 幼児については市町村民税非課税世帯は一部自己負担なし。
※14  3歳未満児については所得制限及び一部自己負担なし。
※15  市町村民税非課税世帯は一部自己負担なし。課税世帯の対象は就学前まで。

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