前に書いた「不動産の代金決済方法3選。そのメリットと注意点」のとおり、買主が売主に代金全額を支払い、売主が買主に所有権移転登記を行うことで、不動産の決済引渡しは完了する。

注意が必要なのは、売主側に金融機関への借り入れが残っていて、所有権移転と同時にその抵当権を抹消する必要があるときだ。
その場合、以下のような一連の作業が発生する。

1.物件の売買契約を行う
2.売買契約したことを売主が金融機関に知らせる
3.金融機関が抵当権抹消書類を作成する
4.決済日に代金全額が売主側の金融機関に支払われる
5.金融機関が抵当権を抹消し、抹消書類を売主側に交付する
6.抹消書類を法務局に提出し、抵当権の抹消登記を行う

売主の抵当権が付いたままの不動産を買主に引き渡すことはできない。
そのままでは金融機関が不動産を没収してしまう可能性があり、買主がその不動産を100%自由に利用、処分できる権利が損なわれるからだ。

売買契約を終えたら、売主は借入先の金融機関に物件オーナーが変わることを連絡する。
知らせを受けた金融機関は抵当権抹消書類を作成する。
この書類は作成に2~3週間かかるとされており、時間的余裕をもっておきたい。

また何よりも、買主から受け取る代金全額で残債全てが返済できなくてはならない。
通常その点を見越して売買価格が決定されるが、もし金額が足りなければ、売主は現金等を追加して返済することになる。

さらに注意が必要なのは、物件所在地と金融機関の店舗所在地が異なる場合だ。
売主が岡山市の物件購入時に東京の金融機関で借り入れしていたパターンがこれに当たる。
所有権移転登記や抵当権抹消登記は物件所在地の法務局でしか行えない。
そのうえ、代金決済と登記移転は通常同じ日に行うとされる。
岡山市内で決済を行い、東京へ移動してA銀行で抹消書類を受け取り、岡山に引き返して法務局で書類提出するのは極めて難しい。
法務局の終了時間は午後5時15分。大変なリスクが伴う。

そのリスク解消のため、上記の場合は「A銀行岡山支店」のような物件になるべく近い店舗で抹消書類を作成してもらう。
そうすればすべての作業が岡山市内で完結する。
ただA銀行内での連携に時間が必要なので、さらなる時間的余裕を確保したい。

登記簿謄本を見て、物件所在地と権利部(乙区)最新の金融機関所在地が異なるときは、くれぐれも注意しよう。

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