以前『相続登記が「国民の義務」に。忘れると10万円以下の過料も』で書いたとおり、2024年4月1日から相続登記の申請が義務化された。
記事タイトルで強調したが、もし申請を怠れば10万円以下の過料を食らいかねない。
そんなわけで、たとえ面倒でも相続した不動産には登記が欠かせない。
でもその登記、いったいどんなふうに進めればよいのか。
今回はその具体的な手順を見ていこう。
【相続登記申請 STEP① 戸籍関係書類の取得】
まず、被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までに作成された戸籍謄本、除籍謄本を全部取得する必要がある。
目的は以下の2つだ。
・相続開始があったことを証明するため。
・法定相続人を特定するため。
身分関係の変動や戸籍のコンピュータ化などによって、戸除籍謄本が複数にわたる場合がある。
下記に、出生から死亡までの連続した戸除籍謄本の流れを一例として挙げた。この例だと謄本が合計4通必要になる。
これらを全部請求、取得しなくてはならない。
新しいものからさかのぼりつつ、各戸除籍ごとに本籍のある市区町村に請求するとスムーズ。
なお、これまで戸籍謄本や除籍謄本は本籍地の市区町村役場でしか取得できなかったが、オンライン化されている謄本に限り、2024年3月1日から今住んでいる地域の役所で取れるようになった。
詳しくは各役所の担当窓口に尋ねてみよう。
【相続登記申請 STEP② 遺産分割協議書の作成】
次に行うのが遺産分割協議。
相続人全員で相続財産の分け方を話し合い、お互い合意した証として協議内容を書面でまとめることになる。
いわゆる遺産分割協議書の作成だ。
対象が不動産の場合、協議書の必要事項はこんな内容だ。
・亡くなった人の死亡日、死亡時の住所、氏名
・分割する相続不動産の所在、地番、家屋番号など、謄本に記載された内容
・相続人全員が分割方法、分割割合について同意していることを示す内容
・相続人全員の住所、氏名、押印(実印)
全員の署名(もしくは記名)、押印が行われる以上、人数分の部数が必要になる。
その他押さえておきたいポイントは次のとおり。
《POINT① 協議書の書き方に法定ルールはない》
協議書の書式、様式は法律で決まっているわけではない。
上に挙げた内容が具体的に示されていればOK。
ご参考までに記載例をお見せしよう。
《POINT② 相続人の住所氏名はできれば直筆で》
相続人の住所氏名はパソコン印字の記名でも法的には問題ない。
なかには文字を書くのが体力的に大変な人もいるだろう。そんな場合は、署名ではなく記名にすることも可能だ。ただし、
・相続人どうしで争いが起きそう。
・提出先の金融機関が印字記名を受け付けない。
といった場合は、本人の署名が必要。
こうしたリスクに対応するため、できれば直筆で書いておくほうがよい。
やむなく代筆にするときは、代筆であること、代筆者を明記する。代筆の委任状も作っておくと安心だ。
遺産分割協議書ができたらこんどは法務局への登記申請。
ここから先は次回で解説します。