今日は、別荘地の中古住宅を買うお客様から実際に私が受けた質問をご紹介します。
避暑にふさわしい緑陰が魅力の物件。購入対象には、なんと敷地裏にある1,500㎡もの「保安林」も含まれていました。この名称、見聞きすることはあっても、自分の所有物になる機会はそうそうありません。
さて、どう扱えばよいのでしょうか。
Q:別荘として買いたい土地に「保安林」という地目が含まれています。
これはいったい何なのでしょうか。
特別な義務や負担金が発生するのでしょうか。
A:保安林。あまり聞きなれない言葉ですよね。
まず保安林が何かというところからお話します。
保安林とは公共の環境保全を担う森林として、国や都道府県から特別に指定されたものです。主な目的は次の3つです。
- 受け止めた雨水を地中で浄化させることで水源を育む。
- 貯水機能をもち、根で土壌を支えることで土砂災害を防ぐ。
- レクリエーションや休養の場として良好な生活環境を保つ。
明治時代に民有林が無計画に伐採された結果、土壌流出や山の荒廃が進んだことが問題となり、明治30年の旧森林法で保安林制度が定められて今に至ります。
そのため自分の土地とはいえ、保安林の利用は大きく制限されます。
主な注意点は下記のとおりです。
- 木の伐採や土地の形質変更を勝手に行ってはいけない。
- もし1の行為を希望するなら、都道府県所轄の窓口への届出、もしくは許可申請が必要。
- 伐採した場所に建物や道を造る際はさらに別途手続きが必要。
- 木が倒れて人や車、建物などに危害を及ぼすと、所有者として賠償責任を問われる。
何より重要なのは1です。
勝手に木を切り倒したり抜いたりするのはご法度。
伐採自体が禁止されている保安林もあるので、役所のチェックを必ず受けなくてはなりません。
基本的に許可申請を要しますが、日当たりや風通しをよくするための間伐であれば届出で済みます。
4の倒木でトラブルを起こさないためには、地元の森林組合に管理を依頼するのがベスト。まずは市町村の林務課などに相談すれば組合につないでくれます。
なお、保安林の指定解除はたいへんハードルが高く、ちょっとやそっとではできません。
県道や国道を広げるために保安林の一部を削らなくてはならないなど、ほぼ公共目的の場合に限られます。
また、保安林の所有者が何か法的義務を負うことはありません。
固定資産税、不動産取得税などは非課税です。
隣地が保安林なら住環境はそのまま維持されると考えられます。
この点はありがたいことですね。