以前、関東と関西で固定資産税の清算ルールが違うという話題を取り上げた。
不動産売買をめぐっては、もうひとつ関東と関西で違うルールがある。それは登記費用の負担だ。

関東(というより関西以外)で不動産取引をした場合、対象物件の所有権移転にかかる登記費用は買主負担となる。融資による抵当権設定登記費用ももちろん買主負担だ。
売主は住所変更登記などをかけないかぎり、登記費用を支払うことはない。
そのため、売主負担の費用といえば、下記の2点だけというのが共通の認識だ。
・収入印紙代(売買契約書に貼り付ける)
・仲介手数料

ところが、関西では「売主が負担する登記費用」が存在する。
売買契約書からの下記抜粋を見てみよう。

(所有権移転登記の申請)
第8条 売主は、売買代金全額の受領と同時に、買主の名義にするために、本物件の所有権移転登記申請手続きをしなければならない。
2 所有権移転登記の申請手続きに要する費用のうち、本物件の売渡しに要する書類作成費及び所有権登記名義人の住所、氏名の変更登記に関する費用は売主の負担とし、所有権移転に関する登録免許税及び登記費用は買主の負担とする。

このうち2項の「本物件の売渡しに要する書類作成費」という部分、実は関西特有の文言。他地域で交わされる売買契約書には見られない。
「売渡しに要する書類」は通常「売渡証書」と呼ばれる。
その趣旨は、買主が売主に売買代金を全額支払ったので、物件の所有権は売主から買主が移転した、ということを売主側から宣言させる点にある。
司法書士が登記所で移転手続きを行う際「所有権移転登記の原因を証する書面」として使われる。

すでに売買契約書には、代金支払いと登記移転は同時に行うと書かれているのだから、あえてこの売渡証書を作る意味がよくわからない。
もしかすると、売買契約書をろくに読まず、代金をもらうときだけ現れる売主がいたのだろうか。そういう極端なタイパ重視の売主のため、あえて売買契約書中の核心中の核心だけをダイジェスト版にまとめたのか。起源の真相は不明だ。

いずれにせよ、関西地域で不動産を売却したとき、売主に登記費用がかかることを認識しておく必要がある。
特に、関西で不動産を所有する他地域の人は要注意。
私の経験上、金額は3~5万円が相場と思われる。
司法書士から思わぬ請求を受けてびっくりしないよう、心得ておきたい。

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