地方移住に向けて物件探しをするなか「市街化調整区域では家が建てられない」というフレーズを聞いたことがあるかもしれない。
呪文のようにひとり歩きしているともいえるこの言葉。その意味を振り返ってみたい。
まず市街化調整区域とは何なのか。

市街化調整区域を知るには、まず都市計画区域を知っておく必要がある。
都市計画区域とは都市計画法で定められた区域。
この区域の至上命題は健全な発展と秩序ある整備。
都市計画区域は、都市化を「進める区域」と「抑える区域」に分けられる。
都市化を進める区域では道路、ライフライン、公園、住宅地などを優先的計画的に整備し、都市化を抑える区域では農地、山林、自然環境などを守り、開発を極力行わないことになる。
この「都市化を抑える区域」が市街化調整区域だ(「進める区域」は市街化区域という)。

市街化調整区域では道路網や下水道網などが発達していない。
公共施設が整っていない地域に住宅が乱立すると、交通や水処理に支障が出て、住環境が悪化する恐れがある。
そのため、新築計画はかなり慎重に吟味され、許可が下りることはまれだ。
市街化調整区域で家が建てられないといわれる所以はそこだ。

市街化調整区域では、そもそも人口を増やすことは想定されておらず、農林業などを代々続けてきた人たちの生活と労働環境を守ることが優先されている。
そのため、新築できる建物はほぼ下記のような例に限られる。

・コンビニエンスストア、喫茶店など地元住民の生活に根差した施設
・区域設定以前から続く農家などの本家が分家するときの新築住宅
・農業関連施設
・もともとそこにあった建物と同規模同用途で計画された建物

こうしてみると「市街化調整区域では家が建てられない」という言葉は、ほぼ真実をついている。

とはいえ、今ある建物の利活用まで禁止しているわけではない。
大規模な増築は役所の許可が要るけれども、現状の範囲内で間取りや設備を変えることは自由だ。

また、インフラ整備が進んでいないため、市街化区域よりも地価や税金が安い。
風景や環境が保たれる点をメリットと見る人も少なくないだろう。

つまり、今ある資源を生かしながら地域の暮らしを守るため、何かアクションを起こしてみようという人にとっては、魅力的な場所といえる。
敬遠されがちな市街化調整区域も、実際に訪ねてみると意外な活路が見出せるかもしれない。

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