今回は久しぶりに土地利用のお悩みトピック。
上水道や下水道を道路から引き込むとき、どうしても他人の土地を通過することになってしまう。
こんなときどうすればいいのか、というお話だ。
2021年の民法改正によると、上水道や下水道、ガス、電気といった生活に密接なライフライン(継続的給付とされるもの)に限っては、他人の土地を使って設備を設置してもよい、ということになった。
これまでは、引き込みOKと言い切ってくれる明確な条文がなかった。
ところが今回の改正によって、その解決に向けて扉が大胆に開かれたのだ。
もちろん人様の土地を使うのだから、いくつか制限のポイントはある。
1.いちばん控えめな方法をとること
その利用させてもらう土地の所有者にとって、最も損害が少ない、言い換えるといちばん控えめな形で使わなくてはならない。
まあ、考えれば当然のことだ。わざわざ家の下を通過させたり、無駄に長いルートをとったりするのはご法度。じゃまにならない最短ルートを心がけよう。
2.土地の持ち主に事前通知をすること
土地を使わせてもらうのだから、事前にお知らせするのが本筋。
ただし、他の記事でも書いてきたが、持ち主に連絡がとれない、あるいはご存命なのかどうかすら不明、ということが往々にしてある。いわゆる所有者不明のパターンだ。
この場合は仕方ないので事後通知でOKとされている。
ずっと連絡がとれなければ、ずっと通知できないことも想定される。
そういう状況も許してしまう思い切りの良さが、この改正のポイント。
まっとうな土地利用をできる限り応援する一方、権利の上に眠る者は保護しないというわけだ。
3.使用料は発生する
条文には「タダで使える」とは一言も書かれていない。
それどころか「償金を支払わなければならない」と明記されている。
したがって、事前通知すると同時に土地使用料の交渉もしなくてはならない。
話し合いにより、一時金で払うことも、年払いにすることも可能だ。
ただ、相場の想像がつかないのも事実。そこは法律の専門家や、不動産業者に尋ねてみよう。
なお、言うまでもないが、所有者と全く連絡がとれない場合、その状態が続く限りは無償で使うことになる。
連絡がとれた時点でまとめて請求される可能性があることは頭に入れておこう。
以上の話は、隣ですでに使われている上水道管や、隣の隣まで来ている下水道管を利用するときにも適用される。ただし、これら既設の設備を使う場合は、償金をまとめて一時金で支払う必要がある。