令和6年能登半島地震による石川県内の住宅被害は、2024年2月19日現在で7万2844棟にも及んだ。
今回の地震で大きな被害を受けたのは建物だけではない。ライフラインも然りだ。
水道管の耐震化はかねてから全国的な課題。厚生労働省は耐震化工事費用の3分の1を補助すると表明し、自治体の動きを引き出そうとしている。
しかしいくら補助があるとはいえ、高齢化や人口減少が進む地域では水道管の交換工事費用は非常に重たい。
石川県の主な水道管の耐震適合率は36.8%(令和3年度末)であり、全国平均の41.2%より低い数字だ。
また、こんなデータもある。
石川県保健環境センターは「石川県における地下水の水質組成(平成29年度~令和2年度)」という調査で、4年間地下水のイオン成分を集めつづけた。
県内273の井戸を調べた結果、最も多い類型は「アルカリ土類重炭酸塩(47.6%)」という最も一般的なものだった。
2番めに多かったのが「アルカリ非炭酸塩(24.9%)」という類型。これは海水または海水の混じった水の成分だ。数十年間使われてきた水道管が塩分によって腐食を起こしていた可能性も考えられる。
下表のとおり、ひと口に水道管といってもいろいろな種類がある。
最近の流れでポピュラーなのがポリエチレン管だ。
材質が柔軟、地盤の変動に対してしなやかに対応する。継ぎ手を溶かして接合するので、管が抜ける、割れて漏水するといったトラブルが少ない。東日本大震災や熊本地震でもほとんど被害が見られなかった。工事も比較的容易で低コストだ。
ただ、温度変化や紫外線で劣化しやすいという弱点がある。能登半島の厳しい冬の気候に向くとは一概にいえない。
そんななか最新鋭タイプとして注目を集めているのがエルメックス管だ。
マイナス70度から95度までの広範な温度幅に耐えられ、塩素水にも強い。素材が溶け出さず安全性大。接合は電気融着工法により、抜けたり漏れたりといった心配も無用。
今回の地震をきっかけに「見えない部分の安全」に光が当てられ、強靭な町づくりが進むことを祈りたい。
主な水道管の種類
特徴 | メリット | デメリット | |
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鋳鉄管 | 鉄と黒鉛を原料とし、明治時代から頑強で腐食に強い管として広く用いられてきた。 | ・耐久性が高い ・作りやすい ・作ったあと均質でムラがない | ・引っ張り強さや粘り強さがない ・衝撃に弱い ・一定の条件下では腐食しやすい |
ダクタイル鋳鉄管 | 鋳鉄管の中の黒鉛(炭素)を球状化させ、硬度と粘り強さを向上させた。1950年代から主流となった。「ダクタイル」とは「柔軟な」の意味。 | ・強靭性が高い ・衝撃耐性が高い ・揺れに合わせて曲がることができる | ・非常に重量がある ・施工しづらくクレーンのような大型機械が必要 ・防食面が傷つくと腐食が進む |
ポリエチレン管 | 水道配管用のプラスチック素材による管。1950年代半ばから広く使われている。 | ・地震や地盤変動に強い ・加工が簡単 ・軽量 ・運搬しやすく施工が楽 | ・紫外線に弱い ・温度変化に弱い ・凍結に弱い |
HIVP管 | 耐衝撃性硬質ポリ塩化ビニル管を略した名称。従来の塩ビ管よりも衝撃に強い。 | ・衝撃に強い ・粘り強さがある ・寒冷な気候に強い | ・コストがかかる |